研究概要 |
マスト細胞はマクロファージと同様TLR4を介してのグラム陰性桿菌の抗原認識を行うが、その活性化の違いについては明らかでない。また自然免疫における重要な抗原であるLPSについても抗原型の違いによって活性が異なるかも明らかでない。その2点にマスト細胞とマクロファージの相違について検討した。1.血清型の異なる大腸菌から精製された4種のLPSはリムルス活性は異なるものの、マクロファージおよびマスト細胞でのサイトカインおよびケモカイン誘導能には相違は認められなかった。 2.LPS刺激でのマスト細胞とマクロファージでのサイトカインmRNA発現では、TNFα,IL-1β,IL-6,IL-10は両者ともに発現が増加していたが、マクロファージではIL-9の発現が見られず、マスト細胞ではLPSによるIL-8の発現増加が見られなかった。これらの結果より、LPS刺激によるIL-9の誘導がマクロファージでは認められず、マスト細胞特異的であることが示された。 そこでT細胞での増殖促進が認められているIL-9のマスト細胞での増殖への影響を検討した。3.マスト細胞での増殖能が知られているIL-3およびSCFとIL-9添加による増殖促進効果を比較したところ、SCFが最も強い増殖活性を有しており、IL-3にもわずかな活性を認めたが、IL-9には増殖活性は認められなかった。4.IL-9との共刺激における増殖効果を検討したところ、IL-3との共刺激ではIL-3単独の1.65倍、SCFでは1.32倍、IL-3とSCFでは1.40倍といずれの場合でも、IL-9との共刺激において増殖促進効果が認められた。5.LPSとIL-3およびSCFとの共刺激においてもマスト細胞の増殖促進が認められたことから、LPS刺激によって誘導されるIL-9産生はオートクラインによりマスト細胞増殖因子であるSCFおよびIL-3増殖促進を誘導し、感染局所でのマスト細胞数の増加に寄与していることが示唆された。
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