研究概要 |
エキノコックス終宿主の糞便に対するDNA検査法の信頼性を評価する目的で実験を行った。 1)臨床材料への応用:臨床検査において,虫卵検査陰性で糞便内抗原検査陽性となった猫が3例見つかったので,それらの猫の駆虫後の糞便について,糞便DNA検査(駆虫後糞便DNA検査)を実施したところ,すべて陰性となった。これらの猫については糞便内抗原検査が擬陽性反応を示したと判定した。 2)キツネ野外材料への応用:野外で270個の糞便を採取し,表面洗浄液中に存在するDNAから糞主動物の特定を行った。結果,209検体がキツネの糞便で,このうち,27検体で虫卵検査が陽性であった。これらついて表面洗浄液中のエキノコックスDNAを検査したところ,22検体のみ陽性を示し,感染固体の糞便であってもDNAが検出されない例が約2割みられた。なお,虫卵検査陽性の27検体はすべて糞便内抗原検査陽性であった。 3)ザンビアの犬材料の利用:ザンビアでは流行するテニア科条虫種がわからない。そこで,ザンビア各地の犬から採取した直腸便540検体について,虫卵検査を実施し,虫卵DNA検査を実施したところ,虫卵陽性71検体中60検体でテニア科虫卵の由来種が判定できた。これらの材料については糞便そのものからのDNA抽出は行わなかったが,虫卵検査で虫卵を検出し,分離した虫卵からDNAを抽出して検査することによって,テニア科条虫種の判定を含む高精度な検査が行えることが確認された。 4)感染実験:経口的に投与した虫卵が犬の糞便中に出てくることがわかり,糞食による虫卵検査およびDNA検査の誤判定の可能性を確認した。 5)本研究により,糞便内虫卵DNA検査および駆虫後糞便DNA検査がエキノコックス終宿主の検査に有用であることが示さた。これらの検査方法を感染犬届け出基準に組み入れるためには,今後,臨床材料による検討数を増やす必要がある。
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