研究概要 |
人獣共通感染症原因菌として知られる病原性Yersinia(Yersinia enterocoliticaおよびY. pseudotuberculosis)の腸管免疫に関与する感染防御抗原を特定するために、病原性Yersiniaが共通して産生する菌体外膜タンパクであるYadAを発現した病原性Yersiniaの培養菌のホルマリン死菌(以下,YadA死菌)および培養菌の膜分画(以下,YadA分画)をワクチンとして用い,マウスにおける病原性Yersiniaに対する感染防御効果を検討した。その結果、Y. pseudotuberculosis 4bから作製したYadA死菌およびYadA分画をワクチンとして皮下投与したマウス群では73.1%が,YadA分画では100%が同一生菌の感染に対し耐過生残した。また、ワクチンを経口投与した場合も高い割合で感染防御効果が確認された。さらに,Y. pseudotuberculosis血清群1b,4bならびにY. enterocolitica 0:8菌の3菌株から作製したYadA分画をそれぞれワクチンとしてマウスに皮下投与し,交差感染実験を行った結果,菌株間に強い交差免疫が認められた。さらに、エルシニア症が多発する複数のサル飼育施設において飼育リスザルにYadA死菌をワクチンとして皮下投与した結果,これらの施設においてエルシニア症が多発する冬季に感染致死例は観察されなかった。これらのことから,YadAは病原性Yersiniaの感染防御抗原となっている可能性が示唆され,これらを用いて効果的なワクチンを開発できる可能性が示された。
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