研究課題/領域番号 |
19580355
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
佐藤 宏 山口大学, 農学部, 准教授 (90211945)
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研究分担者 |
本道 栄一 山口大学, 農学部, 教授 (30271745)
長谷川 英男 大分大学, 医学部, 准教授 (00126442)
横山 真弓 兵庫県立大学, 自然環境研究所, 准教授 (50344388)
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キーワード | Strongyloides / 糞線虫症 / 病原性 / 人獣共通感染症 / 幼虫移行症 / 動物由来感染症 / 診断技術 / 分子系統分類学 |
研究概要 |
糞線虫類(Strongyloides spp.)は、熱帯・亜熱帯地域で人体感染が見られるS. stercoralisを代表種とする50余種が分類され、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類が固有宿主となる。小腸上皮内寄生の体長数ミリの繊細な線虫であること、小腸寄生期には単為生殖する雌虫だけの寄生であること、非侵襲性検査として実施される便検査〜便培養で検出される幼虫には種による形態学的鑑別点が乏しいことなどから、従来の形態学的種鑑別法には限界があった。本研究では、18S rDNA塩基配列に注目し、4つの高変異領域の特定を行うとともに、収集した13種以上の糞線虫種について種間変異・種内変異の局在について検証した。その結果、4番目の高変異領域が種鑑別に有用性があることが確認された。新たな種鑑別技術を組み込み、アジア産リス寄生のS.callosciureusを新種記載するとともに(Sato、 et al.,2007)、土着動物を宿主とする糞線虫種で18S rDNA塩基配列にも種内変異が見られることを指摘した(Sato&Hasegawa、2007;佐藤・長谷川、2008)。この点は、従来、S. stercoralisを用いた研究で否定的な見解が示されていただけに、今後の研究展開に新たな道が拓かれたことになる。なお、線虫類の分子系統学的な分類に頻用されるITS領域は、 A/T繰り返し配列が多くて読み取りに労力が必要であり、種診断技術としては適さないことも確認した。アフリカ帰国者に感染していた糞線虫種の同定に、新たに確立した診断技術を応用し、サル糞線虫S.fuelleborni fuelleborniの感染であることを証明できた(延末ら、2007)。また、アフリカ大陸ガボン産チンパンジー・ゴリラ寄生のサル糞線虫種、日本各地で収集したニホンザル寄生種での地理的変異を確認した。加えて、従来、糞線虫類の口の超微形態学的特徴が種鑑別に有用性が高いことを実証した(Sato、 et al.,2008)。
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