イヌアレルゲンはリポカリンタンパク質ファミリーに属する低分子量の分泌型タンパク質で耳下腺から分泌される。同アレルゲンには2種あり、それぞれCan f 1およびCan f 2と称される。本年度は、イヌアレルゲンのアレルゲン性や生体内機能の本質を理解する試みのため、同タンパク質の生理学的・生化学的性状を検討した。リポカリンタンパク質の基本性状として認知されている低分子の脂質性物質への結合性を調べた。現在までに知られているリポカリン群と異なり、両イヌアレルゲンはレチノイン酸やレチノイド、あるいはオレイン酸などの遊離脂肪酸には全く結合しなかった。同アレルゲンの予想立体構造をコンピュータ解析したところ、リポカリンタンパク質に共通するキャビティー(洞)は認められるものの、両アレルゲンともにキャビーティーが非常に小さく、低分子物質を許容しないものと推察された。また、アミノ酸配列から予想された、メタロプロテアーゼに対する阻害活性について調べたが、両イヌアレルゲンにはそのような活性は検出されなかった。以上の成績は、イヌアレルゲンはリポカリンタンパク質ファミリーに属するものの、特異な性状を持っている事を示している。イヌアレルゲンのアレルゲン性や、イヌ体内での生理的役割の解析には、NMRや線結晶解析により、正確な構造を決定しての議論が必要と考えられた。
|