研究概要 |
これまで、我々は乳牛の消化管粘膜でのCa能動輸送に関与するCa輸送関連タンパク質の分布様式は牛特有のものであり、その機能は単胃動物と同様にvitamin D_3(VD)の生理活性型である1, 25(OH)_2D_3に制御されることを明らかにしてきた。1, 25(OH)_2D_3の作用はvitamin D receptor(VDR)を介するが、牛のCa代謝障害は遺伝性に易発生傾向を示すことから、本研究ではVDR遺伝子多型に関する検索を試行した。昨年度は、消化管組織のVDR mRNAのORF領域の塩基配列を解析し、すべて同さ遺伝子配列であるごとを観察した。本年度は、牛207頭分のDNAを収集し、一塩基多型の有無について遺伝子学的検索を実施した。供試動物は、一般畜産農家6軒で飼養されていたジャージ種牛40頭、ホルスタイン種牛55頭、黒毛和種牛112頭の計207頭である。これらの血液もしくは精液から細胞成分を分離後、DNAを抽出した。NCBIにおけるVDR遺伝子の一塩基多型 : RefSNPID : rs43433069(G/T)ならびにrs43433070(A/C)を含む領域を増幅するプライマーを設計してPCRを行った後、それぞれを制限酵素HpyCH4IIIおよびBbvCIで切断するPcR-RFLP法を確立し、VDRの遺伝子多型を解析した。rs43433069では、全207頭において一塩基多型は認められなかった(TT型)。rs43433070では、ジャージ種牛の7頭においてヘテロ(AC型)を示し、残る200頭において一塩基多型は認めちれなかった(CC型)。rs43433069の一塩基多型部位はexon2(5'UTR)、rs43433070の部位はintron2に相当する。牛のVDR遺伝子多型については、今後も検索が必要である。
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