スペックル・トラッキング・イメージングを用い、臨床的に健康な体格の異なる犬の左室ストレイン、ストレインレート、およびトージョンを測定し、体格による左室収縮様式の差異を見出すこと、さらには犬における本パラメターの基準値の確立が本研究の目的である。 19年度は、小型犬であるチワワ、中型犬であるビーグル、複数の犬種の大型犬、計34頭のデータを収集した。解析を行う上で、再現性、検査者間変動について検討したところ、同一の検査者であれば安定した値が得られる検査であり、臨床に応用できると考えられた。また、明瞭な画像を得るために臨床的に鎮静剤を使用することが多いことから、鎮静剤による影響についても検討したところ、本パラメターは鎮静剤の影響を受けないことがわかった。 体格による影響については先行的な解析を行ったところ、大型犬では小型犬と比較してストレインおよびトージョンが低値をとる傾向にあった。しかし、1回拍出量を体格で補正すると体格による差は認められなかったことから、大型犬で各パラメターが低値なのは心機能が低値であるためではない可能性が示された。したがって、ストレイン測定値を評価するに当たり体格による影響を加味しなければならない可能性があり、本パラメターを使用するにあたって注意しなければならない重要事項となりうると考えられた。本パラメターは、心機能をさらに正確に評価する上で有用となりうる可能性がヒト医学分野で示唆されているが、犬においても解析可能な指標であり、体格の影響を補正すれば評価可能であることが証明されることが期待される。本年度は、さらなるデータの集積および解析を実施する予定である。
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