本年度は研究2年目として、前年度(19年度)に得られたデータに加え、さらにデータの集積を行いその結果について解析し、解釈を行った。19年度に報告した通り、大型犬では小型犬と比較して多くのSpeckle tracking echocardiography(STE)によるストレイン指標は低下しており、体重と負の相関が認められた。多変量解析の結果、ストレイン指標は体重(体格)のみならず、RR間隔に対しても負の相関が認められることがわかった。しかし、通常、RR間隔が延長すると生理的には正の相関を呈するのが生理的に考えられるため矛盾が生じることから、大型犬におけるストレイン指標の変化はRR間隔に依存した変動と考えるより、体格による影響をより考慮すべきであると結論付けた。収縮力の指標としてストレイン指標が使用されていることから、大型犬においてストレイン指標が低値をとる理由として収縮力が低下していることを反映しているとも考えられる。しかし、臨床上健康な正常犬からデータを採取していることから考慮するとそのようには考えにくい。したがって大型犬は物理的に大きな心月蔵を保有していることが、体格に対して見合った血流量を確保するのに幾何学的に有利であるのではないかと推察された。 本研究で得られた成果から、従来の指標では評価しにくかった収縮力を最新技術であるSTEを使用して評価する際、体格(体重)を考慮しなくてはならないことが明らかとなり、また大型犬の血行動態的特徴を解明する糸口が得られたと考えられた。
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