昨年までに、海洋底泥を微生物接種源として高塩濃度含有合成廃水処理メタン発酵系を立ち上げることで、0~7.5%という幅広いNaCl濃度で安定してメタン発酵が進行する系を確立することが可能であること、牛排泄物嫌気消化汚泥を微生物接種源としてアルカリ性BDF廃水処理メタン発酵系を立ち上げることで、pH9を超えるアルカリ性条件下でもメタン発酵が進行する系を確立することが可能であることなどが明らかになった。今年度は、これらのメタン発酵系または接種源から高塩濃度含有廃水のメタン発酵処理やアルカリ性廃水のメタン発酵処理に有効活用できる有用微生物を分離することを試みた。その結果、多数の水素利用メタン生成古細菌および酢酸利用性メタン生成古細菌を分離することに成功した。高塩濃度含有合成廃水処理メタン発酵系から分離したメタン生成古細菌は、16S rRNA遺伝子配列に基づいたPCR-DGGE解析の結果、少なくとも3系統グループに分けられることが示唆されたが、その内の1系統グループは7.5%までの様々なNaCl濃度で増殖可能なメタン生成古細菌であることが示唆され、塩濃度が様々に変化する実廃水への応用が期待された。牛排泄物嫌気消化汚泥から分離されたメタン生成古細菌は水素および酢酸塩を基質として利用可能であり、細胞形態の特徴からMethanosarcina属に近縁なメタン生成古細菌であることが示唆された。今後は、これらの分離菌株の特徴付けをさらに進めていく予定である。
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