コケ原糸体液体培養の効率化と、芽分化誘導の斉一化を課題とし、培養形態、培養条件の検討を行った。また、平行してフィールドワークにより様々な環境からコケを採取し、原糸体の無菌培養系の確立と原糸体の生育特性の調査を行った。 液体懸濁培養時の通気あるいはスクロース添加により、同容量の液体培養に較べ約20倍の懸濁細胞量が得られること、また半個体培地上での培養時にスクロース添加を行うことで、原糸体の分岐分裂が促進され、密度の高いマット状の成長となることが分かった。また、BAPによる芽分化誘導では、従来の独立栄養的な炭素原を与えない培養では、原糸体の辺縁部、すなわち頂端分裂後若い細胞領域でしか芽分化が得られなかったが、スクロース添加により、原糸体は分岐分裂が多くなり非常に密なマット上の成長を示すようになり、また、BAP処理により原糸体の辺縁部のみに見られた芽分化が、原糸体の広がり全体で一様に得られるようになった。炭素原を与えない独立栄養的な培養と較べ、スクロース処理により、原糸体の成長および芽分化までは顕著な促進効果が見られたが、やはり分化した芽の生育が停止してしまうため、コケ原糸体シートは作成できるが、そこから茎葉体が揃った緑化資材として使用可能なコケシートの作成には至っていない。 採取したコケから新たに無菌培養体を得ることで、13種類の蘚類の原糸体成長解析を行い、一日あたりの頂端分裂速度で約4倍の種間差があることが分かった。
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