Tamil Nadu州Gundar川流域を対象としてフィールド調査を行うとともに、それまでの研究成果から得られた知見を日本地球惑星連合2008年大会にて発表した。下記に今年度調査によって得られた知見を述べるが、今後さらに分析を進め成果発表するとともに、成果報告書に記載の予定である。 【流域最下流に位置する農村における人口動態・土地/水資源利用】2008年8月〜9月にかけて、Virudunagar県P.Pudupatti村を中心に聞き取り調査を行った。その結果、(1)ため池受益地として登録されている総面積のうち作物栽培が行われているのは30%弱に過ぎない(2)農業以外の現金収入源は、耕作放棄地で繁茂するマメ科樹木を利用した木炭生産に限定されている、(3)過去10年間で20%弱の人口流出が起きている、などの点が明らかになった。 【流域最上流に位置する農村における人口動態・土地/水資源利用】2008年12月〜2009年1月にかけて、Madurai県Saptur村を中心に聞き取り調査を行った。その結果、(1)ため池受益地のみならず、集水域においても井戸灌漑が広範囲に導入されている、(2)サトウキビ等の要水量の高い作物の栽培が広く行われている、(3)乾季中も井戸灌漑を用いた作物栽培が行われている、(4)過去10年間で人口密度は大きく変化していないことなどが明らかになった。 同村を含めた流域上流部において、市場経済の浸透に伴って高要水量作物が導入され水利用が増大したことが、中・下流部における水不足の原因となっており、歴史的に発達してきた水資源管理の方法が現状の水資源利用と調和していないものと考えられた。
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