研究概要 |
湖沼有光層では,アルカリ性ホスファターゼ活性は,藻類現存量の指標であるクロロフィル濃度と正の相関を示すことがある。しかし,クロロフィルは,藻類の生理状態によって濃度が大きく変動することが知られている。そこで,藻類の生理状態を左右する光合成活性が,アルカリ性ホスファターゼ活性の変動を通じて,リン栄養の可給化,次いでは藻類の増殖能に影響を与えることが考えられる。そのことを明らかにすることを最終的な目的として本研究を行っている。本年度から,パルス変調クロロフィル蛍光測定法による現場の藻類の光合成活性の測定を開始した。また,Chlorella培養系の光合成活性を測定した。 奈良県香芝市の籏尾上池及び籏尾下池を対象として,2002年度以降毎月一度行っている水質調査を引き続き継続して,アルカリ性ホスファターゼ活性の季節変動と,水質及び光合成活性との関係を検討した。その結果,栄養塩濃度が低い籏尾上池では高い光合成活性が認められ,至適条件下の培養系で認められる活性に近い値が観測されることもあった。一方,栄養塩濃度が高い籏尾下池では光合成活性は低かった。リン濃度と光合成活性が負の関係を持つことを示唆する結果も得られたが,ため池ごとには栄養塩との直接的な関係は認められなかった。 国内外の関連する資料の収集を行った。
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