研究概要 |
土壌には不均一な微小環境が存在し、多様な分解菌も土壌中で不均一に分布していると考えられるため、分解菌が存在するかしないかといった大きさの土壌粒子を用いて集積培養を行ない、分解菌同士の競争を少なくした場合に集積される微生物の群集構造の特徴を調べた。高濃度の2,4-Dで汚染された経歴を持ち、多様な分解菌の存在が確認されているベトナム土壌を用いて、直径約1.0mmの団粒状粒子と直径1.6~2.0mmの鉱物状粒子のそれぞれ一粒ずつを96穴マイクロプレートに取り、また、土壌200mgを24穴マイクロプレートの各ウェルに入れ、2,4-Dの濃度が100ppmの無機塩液体培地を添加し、25℃の暗所で静置培養した。土壌粒子の大きさは、およそ半数のウェルで2,4-Dが分解するよう設定した。2,4-Dが分解した個々のウェルにおける微生物群集構造を16SrDNA PCR-DGGE法を用いて調べ、それぞれのDGGEのバンドパターンから微生物群集構造を比較した。土壌200mgから集積培養された微生物群集のDGGEバンドパターンは土壌粒子からのものと比較して一様であり、各ウェル間での多様性は低かった。団粒状と鉱物状の土壌粒子を比較すると、団粒状粒子では鉱物状粒子の約半分の大きさであってもほぼ同数のウェルで2,4-Dが分解し、団粒状粒子にはより多くの2,4-D分解菌が生息していることが示唆された。また、団粒内では多様な微小環境が形成されているため多様な微生物が生息していると一般的に考えられているが、DGGEバンドパターンは鉱物状粒子の方が多様であった。以上の結果から、微小な土壌粒子から集積培養を行うことで従来の方法では集積されなかった多様な分解菌が優占し、それらは土壌粒子の形状によっても異なることが明らかとなった。
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