1.潮下帯藻類群集再生に及ぼすフジツボの効果とウニの影響:アカフジツボの有無×ウニ排除網囲いの有無、の計4実験区を設定した試験板を護岸壁に設けて実験を行った。その結果、有網区では大型褐藻類がフジツボ殻に付着したのに対し、フジツボがない場合、大型褐藻類は少なかった。無網区では、フジツボの有無にかかわらず、藻類の生長は見られなかった。この結果は、ウニによる摂食圧の抑制が藻類の付着・生長に重要であり、フジツボの存在が群集形成に効果的であることを示唆している。現在、大型褐藻の生残と運移確認を目的に、観察時の昇温による大型褐藻類の斃死対策をとりながら、2回目の実験を実施中である。 2.基盤の凹凸が生物群集形成に及ぼす影響:基盤表面の凹凸がもたらす生物群集形成効果を調べるために、4種の異なる凹凸試験板を用いて現場実験を行った。その結果、無網の場合は、凹凸の程度が大きいほど出現生物種数が増加する傾向が見られたが、いずれの試験板でも藻類が大きく生長することはなかった。現在、フジツボ型凹凸と対照×網囲いの有無、の計4実験区を設けて、群集形成・維持効果を検証中である。 3.ウニの摂食阻害による藻類群集維持:上記の実験より、ウニの摂食圧抑制が、今後の主要課題であると考えられた。そこで、ウニの摂食阻害を目的として、試験板に剣山状の杭を種々の間隔で設けることによる藻類の残存効果を室内および現場にて調べた。その結果、杭が5cm以上の間隔ではウニの摂食を阻害することは難しかったが、杭間隔が3cmの場合には、摂食阻害効果が認められた。ただし、現場実験では、杭間隔3cmでアメフラシによると思われる藻類の摂食が明らかになった。現在、現場において、試験板の一番外側の杭間隔を2.5cm(杭間隔5cm実験区)または1.5cm(杭間隔3cm実験区)とすることで、垣根構造による摂食障害効果を検証中である。
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