本研究では、植物系繊維資源の表面の選択的化学処理を行うことによって、衣料用繊維資源としての新たな適性を付与することを目的としている。本年度は、対象として綿布に加えて麻布を取り上げ、主として、そのTEMPO酸化処理による性状の変化について検討した。前年度に実施した酸化処理条件についての検討の結果、綿布の強度的性質の劣化は生じるものの、それが顕著にならない程度の温和な処理条件を見出すことが出来た。また、TEMPO酸化処理に引き続いて還元処理を行うことによって、酸化処理による強度低下を著しく軽減しうることが明らかとなった。また、同様の二段処理を麻布に対して適用したところ、軽度の強度低下は認められたものの、麻の風合いを一層強化した、新たな風合いの布を得ることが出来た。 TEMPO酸化反応を布の最外表面に一層限定的に進行させることを目的として、有機溶剤・緩衝液混合系による処理についても検討を行った。その結果から、最適条件の確立には至っていないものの、今後処理条件の検討を進めることによって、所期の目的を達成することが可能であると判断している。これについては平成21年度に集中的に検討を進める予定である。
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