研究概要 |
海洋細菌Alteromonas sp.O-7株および好熱性放線菌Streptomyces thermoviolaceus OPC-520株をモデル細菌として用い、1.細菌がどのような分子を介してキチンに吸着しているのか?,2.キチン分解産物(N-アセチルグルコサミンおよびキチンオリゴ糖)の輸送系の解析、3.キチン分解産物の代謝経路に関与する酵素の特定および役割、4.キチン分解系、輸送系および代謝系に関与する遺伝子発現調節機構、および5.食品素材としてのN-アセチルグルコサミンおよびキチンオリゴ糖の酵素生産技術の開発等を目的に研究を行っている。本年度は、Alteromonas sp.O-7株のタイプ4線毛のピリンタンパク質pilAがキチン吸着に必要であり、また、細菌の2成分制御系のレスポンスレギュレーターArcAに相同性を有するタンパク質(CdsR)がキチン分解系遺伝子の発現調節に関与していることを明らかにしたが、CdsRをリン酸化するセンサーキナーゼのリガンドを特定するには至っていない。次に、細胞内に取り込まれたGlcNAcは,解糖系を介するエネルギー産生あるいはLPSの生合成に利用され, GlmSタンパク質は両経路の分岐に重要な酵素である.本菌のglmS遺伝子の発現は、GlcNAc存在下において抑制されることを認めた。また, glmS,遺伝子の10塩基上流域にDeoRファミリーに属する調節タンパク質をコードするglmR遺伝子が存在し,さらに150塩基上流域に,膜タンパク質様シグナル配列を有し,6回繰り返しPKD領域からなるPkdAタンパク質をコードする遺伝子が逆方向に存在した.現在,これらタンパク質の高発現系を構築し,キチン分解系における役割について分子レベルで検討している.最後に、glmS遺伝子とは反対にGlcNAc存在下において発現が促進される遺伝子nagCを見出した。この遺伝子は、アミノ酸配列からGlcNAcをリン酸化するものと推定している。現在, NagCタンパク質の機能およびキチン分解系における役割について検討している.また、nagC遺伝子の近隣にGlcNAcまたはキトオリゴ糖の輸送系と推定されるABCトランスポーターをコードする遺伝子を見出した。このABCトランスポーターについても発現系の構築を行い、その機能を検討しているところである。
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