研究概要 |
本研究の大きな目的の1つは,九重・阿蘇地域の放牧地に生息する希少な草原性チョウ類を放牧との両立をはかりながらどのようにすれば保全できるかについて有効な提言を試みることにある.今年度までに,その中核となる草原性チョウ類と放牧の関係について極めて重要な知見を得ることができ,一部は学会誌にその成果を公表することができた.特にオオルリシジミの生息環境を維持するためには,適切な放牧圧が存在することを明らかにすることができたことは,今後のわが国に止まらず世界の草原性チョウ類の保全策を検討する上で極めて重要な研究成果の1つとなるであろう.本年度は,研究実施計画に盛り込んだ項目の殆どについてこれまでの研究成果をふくめて研究成果をとりまとめることができた.学会発表として研究成果を公表したもののうち本種の生息地におけるフン虫相の解明は,生息する草原の特性を解明するために重要な知見をえることにつながった.また,本種以外の草原性チョウ類のモニタリングは,草原性チョウ類と放牧の関係を解明するために重要な知見を得ることになり,その成果は,学会発表として公表することができた.オオルリシジミの食草であるクララについては,その生育特性を野外調査により解明し,その成果の一部は,学会誌に報告することができた.なお,クララと牧草など他の草原性植物との関係については,これまでの研究成果をまとめる段階にあり,今後追実験などを実施し,順次研究成果を公表していく予定である.また,草原性チョウ類の食草について栽培試験を実施し,これまで明らかにされてこなかった栽培に関する基礎的な資料を得ることができた.
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