研究概要 |
哺乳動物精巣特異的ポリAポリメラーゼTPAPは,特定mRNAの球状精細胞特異なポリA鎖伸長に関与している。その欠損マウスでは,精子核や鞭毛などの形態形成にかかわる遺伝子群の転写量が著しく低下しており,結果として精子形成が球状精細胞の段階で停止する。TPAP欠損による精子形成不全の分子基盤と特定mRNAのポリA鎖伸長機構について解析し,以下のような研究成果を得た。また,TPAPが関与しない球状精細胞特異的なmRNAポリA鎖伸長反応についても検討した。 1.TPAPによる転写因子TFIIAγやTAF10などの特定mRNAのポリ(A)鎖伸長は,球状精細胞特異的であるにもかかわらず,TPAPはパキテン期精母細胞において既に,これらmRNAと結合していることが明らかとなった。 2.核での構成的なmRNAポリA鎖付加を行うPAPIIは,mRNA3'末端の配列にかかわらずポリA鎖を付加するのに対し,TPAPはある程度の長さのポリA鎖を有するmRNAにしかポリA鎖を付加しないことが判明した。PAPIIは,TPAPよりカルボキシル末端側に約100アミノ酸残基長いことから,この領域がプライマー結合の特異性に関わっていることが推測された。 3.TPAPの標的mRNA以外にも,アクロシンやその結合タンパク質であるsp32などのmRNAも,球状精細胞でポリA鎖の伸長を受ける。近年新たにポリ(A)ポリメラーゼ活性を有することが明らかとなったGld-2の欠損マウスでも,これらmRNAのポリA鎖は野生型と同様伸長されていたことから,依然として未知のポリA鎖伸長反応が存在することが示唆された。
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