マウス・ホウレンソウ・乳酸菌・大腸菌Hsp70のC末端の多様性を識別するP388D1細胞から識別にかかわる受容体を解析した。P388D1細胞を低張液により破砕し、超遠心分離により細胞膜画分を回収後、オクチルグルコシドの可溶化剤を含む緩衝液で膜画分を処理し、可溶化膜成分の粗画分を得た。固定化マウスHsp72カラムに可溶化上清画分を供与し、Hsp72に結合した画分を塩溶出した。この溶出画分をマウスに免疫し、脾細胞を採取後、定法に従ってミエローマと融合させ可溶化膜成分に対するモノクローナル抗体を作製することを試みたが、特異的な抗体の取得に成功しなかった。これは、用いた溶出画分における膜受容体HSP-DDRへの特異性が低かったためであると考えられた。そこで、特異性を向上させるために、光反応性架橋剤SBEDで修飾されたSBED-Hsp72をP388D1細胞と反応させUV照射を行いHSP-DDRとHsp72を光架橋後、HSP-DDRを特異的にビオチン標識した。可溶化後、抗ビオチン抗体でビオチンラベルされたHSP-DDRを免疫沈降し、SDS-PAGEとウェスタンブロッティング法を用いてラベルされた膜受容体を分析した。マウスHsp72はP388D1細胞に結合性を示し、一方、乳酸菌DnaKは結合性を示さないので、両者において差が見られるビオチン化膜タンパク質を調べた結果、膜受容体の候補として、分子サイズ130〜300kDaにかけて6種類のタンパク質が得られた。さらに、P388D1細胞の表面抗原の特徴を解析したところ、P388D1細胞はB細胞系の株化細胞であることが判明したので、マウスの生体内の細胞において同様な識別をする細胞群を解析したところ、B細胞とマクロファージの抗原提示細胞が真核生物由来と原核生物由来のHsp70を識別することを明らかにした。
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