研究概要 |
P388D1細胞表面に存在しマウスHsp72のC末端領域を識別する膜タンパク質HSP-DDRを同定するために、光反応性架橋剤SBEDで修飾されたSBED-Hsp72をP388D1細胞と反応させUV照射を行いHSP-DDRとHsp72を光架橋後、膜受容体HSP-DDRを特異的にビオチン標識し、候補分子を探索した。その結果、分子サイズ130〜300kDaにかけて6種類のタンパク質が得られたが、これらの候補受容体を効率よく、かつ純度よく、可溶化剤の種類を複数組合せながら精製を検討したところ、界面活性剤のなかではオクチル-β-D-グルコピラノシドが適することを見出したが回収量に問題があった。引き続き部分精製を継続中である。また一方、腫瘍細胞を用いて誘導型Hsp72のC末端領域が生体内の細胞において免疫細胞へのシグナルとなり得るのか否かについて調べた。その結果、マウス肺癌カルシノーマLL/2細胞に対して42℃で2時間の温熱処置を施すと、細胞内での誘導型Hsp72の発現とともに細胞表面へのHsp72提示が生細胞において観察された。温熱処置されたLL/2細胞は、Hsp72の504〜617アミノ酸残基を認識する抗体と特異的に反応したが、122〜264残基を認識する抗体とは反応しなかったことから、この提示にはHsp72のC末端が関係していることを明らかにした。Hsp72の組換え体を作製し、種々の免疫細胞との結合性を調べたところ、CD11b,CD11c,NK1.1陽性を示す自然免疫系にかかわる細胞群と結合することが判明した。この結果は、株化細胞のみならず本来の生体防御系においてHsp72のC末端領域が生物間のシグナルの授受に寄与することを示した例を意味している。
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