Transketolaseはすべての生物に必須な基本的代謝酵素である。そのため、その研究は古くから行われてきた。今日のゲノム情報の蓄積により、我々はある細菌が既知のTransketolaseのドメイン構成に対応した、サブユニット構成による分裂型のTransketolaseを持っていることを明らかにした。真核生物ではアミノ酸約700残基からなるドメイン型のみを持つのに対し、真正細菌はドメイン型のみ、あるいはサブユニット型と両方を持つものが存在する。さらに古細菌はドメイン型のみを持つ。このことは、生物を3つのドメインとして考えられている中、真正細菌から真核生物に進化する過程において、古細菌の位置づけに興味深い視点を与えるものである。 本年度はそこで、古細菌よりサブユニット型のTransketolaseをクローニングし、大腸菌における発現系、精製系の構築を行い、酵素活性を測定するために十分な量のタンパク質を得ることに成功した。酵素活性はglycol aldehydeを用いた系とドメイン型Transketolaseで基質として知られている化合物を用いた2種類の系で行った。その結果、すでに知られているTransketolaseと同様と考えられる酵素活性を得ることに成功した。しかしながら、ドメイン型酵素に比較し、活性が弱いと考えられたため、活性測定条件の最適化が必要と考えられた。また、作用機構をより詳細に解析するために、X線結晶構造解析を目指して結晶化を試みたが得るにいたらなかった。
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