申請者らは、致死的な心血管イベントを引き起こす血管攣縮の原因分子としてスフィンゴシルポスホリルコリン(SPC)、さらに血管攣縮の特異的阻害物質としてエイコサペンタエン酸(EPA)を見出した。本研究では、血管攣縮に対するEPAの作用機構と、シグナル伝達の反応の場と考えられる細胞膜上ドメイン「膜ラフト」との関連性を解明し、血管攣縮を特異的に抑制する機能性食品素材を探索することを目標としている。 平成19年度は、(1)新規血管攣縮抑制物質の探索、(2)EPAの構造活性相関の検討、(3)分子間相互作用解析の実験システムの確立を行った。 結果(1)新規血管攣縮抑制物質の探索:申請者らが開発した血管異常収縮アッセイシステムにより、種々の食品素材から機能性物質の探索を行ったところ、海産物から抽出した新規成分に血管攣縮を抑制する傾向があることを明らかにした。 結果(2)EPAの構造活性相関の検討:EPA関連物質の機能的部分構造を明らかにするため、化学構造描画プログラムにより三次元モデルのシミュレーションを行った。その結果、立体構造の違いにより脂質二重膜への親和性が異なることが示唆された。 結果(3)分子間相互作用解析の実験システムの確立:脂質膜に対する分子間相互作用解析に向けて、モデル膜の改良、センサーチップへの固定化法および再生方法の検討、ブロッキング剤の検討、感度の向上等を行い、実験システムを確立した。特に、膜ラフト組成を有するハイブリッドリポソームの作製は、血管攣縮のシグナル伝達機構を解明するにあたり必須であるが、その脆弱性が懸念されていた。そのため、ハイブリッドリポソームに改良を加え、構造の安定化を図った。
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