研究概要 |
本年度は研究計画の初年度として,史蹟名勝天然紀念物保存法下(大正8年〜昭和25年)及びそれ以前における名勝地の調査・研究等に関する資料を主なものとして資料の収集・整理・検討を進めた。具体的には,東京大学総合図書館,国立公文書館,国会図書館等において,史蹟名勝天然紀念物保存法制定時前後の名勝地に関する包括的な資料の調査を行い,そこで把握された情報を踏まえつつ,都道府県の史蹟名勝天然紀念物調査會等において実施した史蹟名勝天然紀念物調査報告等の名勝地に係る成果の一部その他の名勝地に関する資料の収集等を行った。この中で,史蹟名勝天然紀念物の保存の取組において都道府県ごとに名勝地に関する関心の観点・度合いに相当の差があることも伺われるなど,近代における全国の趨勢の大要を把握することができたが,なお,この関係の資料の収集等については,引き続き次年度にも行い,可能な限り網羅的な名勝地に関する資料の一覧を作成するなどの作業を通じて,名勝地概念の普及について更に具体的に検討・考察を深めていく必要があると認識した。 また,各地に所在する名勝地に関する基礎的情報の収集・検討について文化庁文化財部記念物課名勝部門の担当者との協力・連携の下に実施すべき全国的な調査に係る協議を行い,これまで都道府県及び市町村の文化財保護条例等により指定・登録等の法的処分を受けている名勝地について情報を収集する準備作業を行った。 なお,名勝地の重要な分野である庭園及び公園について,概念の基礎的な整理・検討の成果の一部として,「名勝庭園の歴史と展望」(日本庭園学会誌,第17号),「文化的資産としての近代庭園及び公園の保護」(日本庭園学会誌,第18号),「文化遺産としての遺跡・庭園・公園の概念に関する比較考察」(遺跡学研究,第5号)の各小論考を学術雑誌に投稿・掲載した。
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