本年度は研究計画の第2年度として、資料の収集・整理等により、「名勝資料集成(仮題)」の作成に関する検討を進め、名勝の保護に係る専門家を招聘して名勝地の概念及びその適用に関する座談会を開催した。具体的には、前年度に引き続き、史跡名勝天然紀念物保存法下(大正8年〜昭和25年)及びそれ以前における名勝地の調査・研究等に関する資料を中心に、追加して資料の収集・整理・検討を進めたとともに、前年度から継続して、日本各地に所在する名勝地に関する基礎的情報の収集・検討について、文化庁文化財部記念物課名勝部門の担当者との協力・連携の下に、全国的な把握調査を実施し、都道府県及び市町村の文化財保護条例等により、指定・登録等の法的処分を受けている名勝地について、情報を収集し、整理・検討を行った。また、「文化的資産としての名勝地に関する座談会」を開催し、これらの検討を下に整理した基礎的資料を材料として、4人の専門家とともに「名勝地」の本質・類型・調査・保護に関して討議を行い、特に文化的資産の多様な把握の視点が展開する今日における名勝地の将来像などをも視野に入れつつ検討を進める必要性が明らかにされた。さらに、今後の検討においても必要に応じて同様の議論を行うべきと判断された。 なお、名勝地を包括する造園遺産について、概念の基礎的・包括的な整理・検討の成果の一部として、「日本における近代造園遺産の保護」(遺跡学研究、第5号)の小論考を公表するとともに、「名勝地としての文化財庭園」と題して、これまでの本研究課題の検討成果を踏まえつつの庭園の保護について講演を行った。
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