研究概要 |
本年度は研究計画の最終年度として、名勝地の資料収集・整理を進めつつ、過年度に実施した「文化的資産としての名勝地に関する座談会」の成果を取り纏め、また、各地に所在する名勝地に関する基礎的情報の収集・検討については、文化庁文化財部記念物課の担当者との協力・連携の下に全国的な調査を実施し、都道府県及び市区町村の文化財保護条例等により、指定・登録等の法令上の処分を受けている名勝地について情報を整理した。 さらに、今年度は特に、中国、韓国等における名勝地の保護の現状について、それぞれの制度・実績等を把握したのみならず、韓国のソウルで開催された国際学術シンポジウム『名勝の現状と将来』での講演・討論の機会も得て、北朝鮮の名勝地保護の実際についても情報を得ることができた。 これら今年度の検討等を含め、3か年度にわたる本研究の成果については、『文化的資産としての名勝地』(pp.357,ISBN978-4-902010-85-5)として取り纏めた。目次の大要は、I.本研究の目的と本書の構成、II.名勝地について、III.名勝地としての庭園と公園、IV.自然の名勝地、V.文化的資産としての名勝地に関する座談会[平成21年(2009)3月11日]、VI.中国・韓国・北朝鮮の名勝、VII.補論:文化的資産としての風景-名勝地と文化的景観の保護制度-、VIII,文化的資産としての名勝地の保護のために、IX.資料、である。特に、既往の名勝地に関する情報を整理し、名勝地とその密接な関連を指摘されている文化的景観との概念とその適用の違いを明らかにした点で、本研究は、造園学上、極めて有意義な成果を提示したものと言える。 なお、この成果については、都道府県教育委員会文化財保護主幹課のほか、名勝・登録記念物(名勝地)所在市区町村、日本造園学会等に所属する専門家をはじめ、名勝地の保護に取り組む各方面に公表することとしている。
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