研究概要 |
これまでに合成を行ってきたビスグアニジン型塩基(BG)と安息香酸(BA)との複合体の構造について計算化学により評価した。すでに単結晶X線解析により求められているBG:BA=1:n(n=0〜4)の複合体の結晶構造から計算される体積と、対応する複合体のNMRより求められる自己拡散係数との間に相関が見られ、この内容について論文を投稿した(Heterocycles)。一方、BGとリン酸やヒ酸などの酸との混合物のNMR解析により、水溶液中で1:1の安定な錯体を形成することを見出し、この水溶液を乾固したものを再結晶して安定なBG-酸成分錯体の結晶を得、単結晶X線解析によりその構造を決定した。さらにポリマーに固定化したビスグアニジンを合成し、各種酸性分が水溶液中より抽出可能であることを見出した(論文1)。その他、光学活性なグアニジンを用いた不斉反応やBGの不斉結晶化を検討し、学会発表、および論文発表を行った。 くらげから抽出した「ムチン」は、抗菌性作用や保湿効果など医薬品や食品添加物として注目されており、今回我々は高分子糖蛋白質の一種である新規ムチン(qnimucin)の構造を溶液および固体NMRを用いて、構造解析研究を行った(NMR study on a novel mucin from jellyfish in natural abundance,qniumucin from Aurelia aurita;Uzawa, J.;Urai, M.;Baba, T.;Seki, H.;Taniguchi, K.;Ushida, K.;J. Nat. Prod., accepted.)。この解析で用いた^1Hselective HMBCやDPFGSE-NOE-HSD法は、エンリッチすることが困難な複雑にピークが重なった混合物や糖鎖の立体構造を含む詳細な構造解析に、非常に有効な測定法であることが分かった。
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