申請者はこれまで、現在までにテトロドトキシン基本炭素骨格に必要な官能基を備えたシクロヘキサン化合物を得ることに成功している。本合成経路では、分子内Diels-Alder反応を用いて必要な炭素原子をすべて有するビシクロ[2.2.2]骨格を構築した後、その骨格の立体的特性を利用して各官能基の立体化学を制御することが可能である。また別の検討により、環状エノールエーテル部位を酸化的に解裂しカルボン酸とした後、転位反応を経てアミノ基が導入可能であることを確認している。しかしながら、原料のイソバニリンからビシクロ[2.2.2]骨格までの変換に多段階を要すること、不斉合成において満足のいく不斉収率を得ることができていないなど、解決すべき問題も明らかになった。昨年度の研究にて原料の不斉合成には目処が立ったので、先の合成研究を行った。これまで炭素-炭素結合解裂の足がかりとなる1.2-ジオールの導入において、近傍にカルボニル基が存在していると、レトロアルドールーアルドール反応が進行し、望みのシスジオールではなくトランスジオールが得られることが明らかとなっており、その解決策としてカルボニル基をあらかじめ還元しておくこととした。しかしながらカルボニル基の還元の立体選択性に問題が有ったため、カルボニル基存在下ジオール化する方法を検討した。種々検討した結果、フェニルボロン酸存在下ジオール化することにより、異性化が進行するよりも前に環状ボロン酸エステルとしてジオールが捕捉できることが明らかとなった。このボロン酸エステルを足がかりとして、各官能基を立体制御して導入する検討を行った。
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