研究概要 |
耐え難い苦痛を伴う癌が死因の上位を占める現在の日本においては、真に有効な制癌剤の開発は勿論のこと、患者の生活の質の向上につながる副作用の少ない鎮痛剤の開発が強く望まれる。我々は、高反応性窒素ラジカル種および炭素ラジカル種に着目し(J.Synth.Org.Chem.,Jpn.,2007,65,665.など)、その化学的特性を駆使した有機分子の短工程高度官能基化を基盤として、抗腫瘍活性天然物agelastatin A、鎮痛活性先導化合物aphanorphineならびに誘導体の新規合成法を確立し、制癌と疼痛制御に資する優れた医薬資源を開拓することを目的とする研究を行った。 その結果、本平成19年度の研究では、独自に見出したラジカル反応を鍵としてaphanorphineの短工程全合成経路を開拓することに成功するとともに、agelastatin Aの高度に官能基化された基本骨格をもつ合成中間体の獲得に成功した。さらに、aphanorphineの合成研究における過程で、第三級アミンをはじめとする含窒素物質を一挙にアミノ酸誘導体に導くことのできる新規ラジカル反応を開発することにも成功した。このような変換反応はこれまでに知られておらず、本研究課題の主目的ぞある含窒素天然物の合成法の開発にも重要な影響を及ぼす興味深いものである(Org.Lett.,2007,9,5115.)。
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