研究概要 |
アリールボロン酸ダイマーであるbis-(6-methoxyphenyl)methane-3,3'-diboronic acid(1)が水溶液中で遊離グルコースの1位と2位および4位と6位の水酸基に可逆的に結合する性質を利用し、フリーの3位の水酸基を位置特異的にグリコシル化する新規な短工程糖鎖合成法の開発を目指した。 今年度は、有機溶媒中でのアリールボロン酸ダイマーと遊離糖との複合体形成を解析することを目的とし、アリールボロン酸ダイマー(1)の合成、1とグルコースの反応性の検討およびグリコシル化反応における糖供与体の合成を計画した。 既報に従ってボロン酸ダイマーの合成に着手したが、最終段階であるbis-(5-bromo-2-methoxyphenyl)-methaneへのリチオ化/ホウ酸トリメチルによるボロン酸の導入が難航し、目的化合物を得ることができなかった。現在、宮浦-石山ホウ素化により目的化合物の合成を検討している。 糖供与体としては、グルコース、ガラクトース、マンノースの1-プロモ糖に加え、1-フェニルチオ糖を合成した。アリールボロン酸存在下、これらの糖供与体と無保護のメチルガラクトシドを受容体として用いるグリコシル化反応において、on-potで相当するβ(1→3)二糖を選択的に収率よく合成できた。 また、ボロン酸ダイマーの代わりに、遊離グルコースに対して2当量のフェニルボロン酸存在下、フェニルチオグルコシドを糖供与体としてグリコシル化反応を行ったところ興味深い知見を得た。すなわち、グルコフラノースの1位と2位および3位と5位の水酸基がボロン酸エステル化された中間体を経て、on-potでβ(1→6)二糖を収率75%で得ることができた。この結果はアリールボロン酸ダイマーを用いる無保護糖のグリコシル化反応により、短工程糖鎖合成法の開発が可能であることを示唆する。
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