研究概要 |
アリールボロン酸ダイマーbis (6-methoxyphenyl) methane-3,3'-diboronic acid(1)が水溶液中で遊離グルコースの1と2位および4と6位の水酸基に可逆的に結合する性質を利用し、3位の水酸基を位置特異的にグリコシル化する新規な短工程糖鎖合成法の開発を目指した。 1. ボロン酸ダイマーの合成:宮浦.石山ホウ素化により合成した1のピナコールエステル体の酸型への変換が困難であったが、ポリスチレン-ボロン酸とのエステル交換により定量的に1を得ることが出来た。また、水溶液中でフルクトースに親和性のあるortho-ジボロン酸(2)を2当量の4-carboxyphenylboronic acid とα,α'-dibromo-o-xyleneとから調製した。 2. 1) 有機溶媒中でのアリールボロン酸ダイマーと遊離糖の反応:ボロン酸ダイマー(1)は水溶液中とは異なり、アセトン、ジクロロメタン、トルエンなどの有機溶媒中ではグルコースに対してボロン酸エステルを形成しなかった。同様に、ortho-ジボロン酸(2)も有機溶媒中ではフルクトースとボロン酸エステル体を形成しなかった。 2) 有機溶媒中でのアリールボロン酸と遊離糖の反応:アセトン中グルコースと2当量のフェニルボロン酸とを加温するとグルコースの1と2位および3と5位の水酸基にボロン酸エステルが形成されたグルコフラノースが定量的に形成された。 3. 無保護糖のグリコシル化:上記2の結果から、ホロン酸ダイマーを用いる無保護糖のグリコシル化反応は成功しなかった。しかし、遊離グルコースと2当量のフェニルボロン酸をアセトン中で加温したのち、種々のベンゾイル保護チオ糖をドナーとして用いるグリコシル化により特異的にβ1,6-二糖を高収率で得ることが出来た。本法は、現在までグルコースの他、ガラクトース、マンノース、フルクトース、タガトースなど7種類の遊離糖に対してone-potで位置特異的な(非天然型を含む)二糖類の合成に適用できた。
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