研究概要 |
近年メルク社のグループによって発見されたプラテンシマイシンは,バンコマイシン耐性菌に対して有効であり,さらに特異な骨格を有することから世界中の科学者より注目を集めている.平成19年度の検討において,我々はすでにプラテンシマイシンの形式的全合成を達成している.本経路は4環性骨格の構築の際のストラテジーが,既に報告されているCorey教授のものと類似しているが,我々の経路の方が短工程であり,試薬等も安価なものを用いている長所がある.一方,収率や立体選択性に問題点を残す工程があった.平成20年度の検討において全行程の更なる精査を行い,新規なストラテジーの開発も含め上記の問題点をすべて解決した.前年度の検討ではケトン存在下でのカルボン酸ユニットへのジメチル基の導入の際に低収率であった.これに対し新たなストラテジーを展開した.すなわち,ケトン部位を系内でエノレートとして一時的に保護した後エステル部位へのジメチル基の導入を行い,目的の化合物を定量的に得た.さらに,4環性骨格構築の際の足がかりとなるイソプロペニル基の構築の際の収率も低いものであったが, Burgess試薬を用いることにより,この工程も定量的に進行するようになった.その結果,出発原料である安価なアニスアルデヒドより9工程50%という収率で4環性骨格の構築に成功した.また,エナンチオ選択的な接触還元を基にした光学活性体の合成にも成功し、現在欧文誌への投稿論文を作成している.
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