研究概要 |
1)本研究課題であるセレン,テルルを含む種々の複素環化合物の合成の一端として,「1-ベンゾテルロピリリウム塩の化学」を総説として有機合成化学協会誌にまとめた。 2)セレン,テルルを含む複素環化合物の合成法である「カルコゲノール類の分子内三重結合への環化付加反応」を発展させ,1分子内に2つのカルコゲノール類および三重結合を有する化合物を設計することにより,ダブル環化を誘起させた。その結果を22^<th> International Congress on Heterocyclic Chemistry(St.John's, Canada)および13^<th> Blue Danube Symposium on Heterocyclic Chemistry(Bled, Slovenia)の2つの国際学会で口頭およびポスターにて発表した。結果の一部はTetrahedronに投稿され,印刷中である。 3)これまでカルコゲノール類のカルコゲン源として,カルコゲンおよびその塩(主としてNa塩)を用いてきたが,今年度は新たにイソセレノシアナートを使用した。その結果,2次的にセレノールを生成させ,その分子内三重結合への付加・環化を利用することにより,主として含セレン6員複素環化合物の新たな効率的な合成法の開拓に成功した。得られた一部の化合物群には,抗ウィルス活性が認められ,特許を取得するとともに,日本薬学会北陸支部第120例会ならびに第39回複素環化学討論会で口頭発表した。結果の一部はSynthesisに投稿され,印刷中である。 4)当研究代表者が新たに創出したテルル原子を含む6員複素環化合物であるイソテルロクロメン類の機能性を検討した。その結果,m-クロロ過安息香酸酸化により開環し,ジスチリルジテルリド類が生成するまったく新たな反応を見出した(Moleculesに公表)。 5)さらにイソテルロクロメン類のハロゲン化,アルキル化およびアリール化を検討し,その生成物の構造を単結晶X線構造解析により言及した。その結果,ハロゲン化物は4価のテルランであり,アルキル,アリール化物はテルロニウム塩であることが明らかとなった(Heterocyclesに公表)。 以上,先に提出した交付申請書の「研究実施計画」に記した(1)~(4)のすべての項目が計画通りに実施され,期待通りの結果が得られた。
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