本年度は下記に示した点について重点的に検討し、成果を得た。 (1)O-アリールオキシムエーテル類のラジカル反応 トリエチルボランをラジカル開始剤としてクロロホルム中、O-フェニルオキシムエーテル類のラジカル反応を行った結果、タンデム型にラジカル付加反応、N-O結合開裂反応およびアシル化反応が一挙に進行して、尿素誘導体が比較的良い収率で得られることを見出した。本反応は、基質としてO-フェニルオキシムエーテル類の変わりに各種アミノエステル類を用いた場合でも容易に進行し、カルバメートおよび尿素類が収率よく得られることを明らかにした。 (2)O-アリールオキシムエーテル類の転位反応 これまでO-アリールオキシムエーテル類をトリフルオロアセチル化すると、N-O結合の開裂、C-C結合形成、フラン環形成の3種の反応が一挙に進行するドミノ型反応が進行することを見出している。今年度は、アリール基上およびエナミン側に種々の置換基を有するO-アリールオキシムエーテル類の転位反応を検討した。その結果、アリール基上にニトロ基を有する場合はビアリールタイプの生成物を効率よく合成できることを明らかにした。
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