遺伝情報からつくられたタンパク質の多くは、翻訳後タンパク質修飾を受けた後に本来の役割を果たすことが知られている。翻訳後タンパク修飾の内、プレニル化(ファルネシル化およびゲラニルゲラニル化)は、Gタンパク質の3量体化や細胞のがん化に深く関与していることが明らかとなっている。今回、プレニル化におけるタンパク質の機能解明を目的に、新たな機能性ゲラニルゲラニオール(GGOH)として重水素5個で標識したゲラニルゲラニオールを合成した。1位の標識はアルコール末端に近く、GGOHはニリン酸(GGOPP)を経由して酵素によりタンパク質修飾がおこなわれることを考慮すると、同位体効果の影響を大きく受けることが予想される。そこで、この同位体効果をできるだけ避けるため、末端部から離れた19位のメチル基と5位のメチレンの5個を標識することにし、アセト酢酸エチルのジアニオンとゲラニルブロミドから得たケトエステル体を選択的にZ-トリフラートとし、重水素標識したジメチルカッパーリチウムとの反応後、LiAlD_4で還元しd_5-ファルネソールを得た。次に、水酸基を臭素化後、アセト酢酸エチルのモノアニオンと反応しケトエルテルとした後、加水分解と脱炭酸によりケトン体とした。続いて、C2-ホスホネートとのHorner-Emmons反応により側鎖の延長と官能基変換により目的のd_5-GGOHとした。 ここで得たd_5-GGOHは、プレニル化における酵素反応に利用できるかどうかを確認するため、常法により重水素標識した二リン酸へと誘導した。また、ビタミンKの代謝経路を解明するための標品とするため、市販のd_8-ビタミンK3を還元したヒドロキノン体との縮合をへてd_<12>-メナキノン-4へと誘導することができた。
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