研究概要 |
新光延試薬(CMMP)は,従来の試薬ではなしえないさまざまな反応を可能にした。活性メチレン化合物を求核剤とした炭素-炭素結合形成反応や,スルホニルアミドを求核剤とした炭素-窒素結合形成反応である。19年度は特に窒素求核剤に注目した。 アミン類の中には優れた生物活性を持つものが少なくないが,その合成には多くの労力を必要とした。光延反応を利用してアミン類を合成する手法は魅力的な方法であるが,そのためには優れたスルホニル基の開発が待たれていた。そこで,今回酸性条件下に脱保護できるDios基を開発した。Dios基で活性化されたアミン類は,新光延試薬共存下に様々なアルコールによりアルキル化された。また,反応に際し,アルコールのもつ立体化学を完全に反転させながら炭素-窒素結合が形成されることも明らかにした。これにより,新たなアミン類合成法が開発できた。 一方,新反応の有用性を示す意味でヘテロ環化合物の合成を目標にしているが,その対象となる天然物の探索もしてきた。アブラムシは特異な色素を産生しており,それらは興味深い生物活性を示す。今回,黄色色素の構造決定に成功したが,この化合物は以前構造決定した赤色色素の骨格転位物であった。生物活性の観点からも興味深い化合物で,目下精力的に研究に取り組んでいる。
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