グリコシル化反応において高い収率、選択性を持つ糖供与体の開発のためには、グリコシル化反応に対する深い理解が必要となる。しかしながら、グリコシル化反応においての中間体の観測については世界的にもほとんど行われていないのが現状である。研究代表者は高いcis-選択性を持つアミノ糖供与体の開発に成功している。この糖供与体の選択性発現のメカニズムを解明するために、分光学的手法による中間体の観測を行うことを目的とした。 電解法によりオキサゾリジノンを持つチオグリコシド、アジド基を持つチオグリコシドから定量的に対応する糖トリフレートに変換できることが明らかとなり、低温NMRにおいての解析を行い、α体であることを明らかにした。また、糖トリフレートがアルコールと反応し、対応するグリコシドを与え、アルコールの反応性によりグリコシドの選択性は変化することを見出した。糖トリフレートの熱的安定性についても検討した。化学法においてはα-トリフレートとβ-トリフレァトの両方が存在していることもなった。NMR測定において中間体であると予想されるオキソカルベニウムイオン中間体についてはその寿命が短いことと、存在濃度が低いため分光学的に捕捉に至っていない。これについてはアノマー位を13Cでエンリッチし、13C-NMRにより追跡を容易にすることを目的として糖供与体の合成を完了した。また、ピラン環の配座を変化させた糖供与体の合成も完了した。また、cis-選択性発現のための中間体について計算化学からも明らかにすべく、検討中である。
|