研究概要 |
本年度得られた研究成果は以下の通りである。 1.酸素電極を用いたスーパーオキシドアニオン(O_2^-)測定法を開発し,O_2^-消去剤の活性評価に応用した。本法は、鉄(III)-ニトリロ三酢酸錯体(Fe(III)NTA)と過酸化水素(H_2O_2)との反応により生成したO_2^-が、Fe(III)MAと反応して酸素に変化するため,O_2^-生成量と酸素発生量が対応することを利用している。アミノ酸などの抗酸化剤のO_2^-消去活性を酸素電極法により検討した結果、吸光度法(ニトロブルーテトラゾリウム法)の結果とよい相関関係が得られ,本法がO_2^-消去剤の活性評価に応用できることが示された。 2.ポルフィリン類による細菌の光不活性化機構を解明するために、細菌細胞質膜に対する作用をセンサーを用いて系統的に検討した。その結果、抗菌作用の強さと膜電位低下との相関性が見出され、抗菌作用の強いボルフィリンは細菌の細胞質膜電位の低下を引き起こすことが示された。さらに、呼吸阻害と膜透過性変化を測定したところ、呼吸阻害が大きく引き起こされていることが見出された。この事実は、ポルフィリンによる光不活性化は、呼吸阻害による膜電位低下が引き金になっていることを強く示唆した。一方、水溶液中でのボルフィリンの存在状態を検討したところ、適度な凝集状態をもつポルフィリンに強い抗菌作用が見られる傾向があることが示された。ポルフィリンなどの光増感剤を使用した細菌の光不活性化は、感染症などの治療にも応用されていることから、本研究で行われた細菌細胞質膜に対する一連の作用の検討は今後の光増感剤の開発に新たな指針を与えるものと思われる。 3.その他、酸素電極を用いたヒドロキシルラジカル(HO・)の定量、ポリエン抗生物質が細胞膜に開けたチャンネルサイズの定量などの研究成果が国際雑誌に掲載された。
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