研究概要 |
ゲノム塩基配列中に一塩基の変異が1%以上の頻度で見られることを一塩基多型(SNP)と呼ぶ。SNPを利用して,疾患関連遺伝子の特定や遺伝病の危険率の診断が行えると期待されている。SNPの検出法として,制限酵素断片長多型法,Invader法,TaqMan PCR法,一塩基伸長法,PyroSequence法,Exonuclease Cycling Assay法など種々の方法が開発されている。それらの方法は,スクリーニングスケールの大きさ,機器の種類,分析精度,簡便さなどを選択基準として利用されている。本研究において研究代表者は,リン酸基に選択的な親和性をもつ機能性分子(フォスタグ,Phos-tag)を用いた新しいSNP検出を開発した。この方法では,アクリルアミド基をもつPhos-tagを共重合させた電気泳動用アクリルアミドゲルを使用する。 ヒトのゲノムDNAを鋳型とし,2種類のアレル特異的プライマー(5'末端にリン酸基を持つものと持たないもの)とそれらとペアになる共通のリバースプライマーを用いてPCRを行った。この操作により,同一塩基数の5'-リン酸化アレル特異的PCR産物と非リン酸化アレル特異的PCR産物が得られる。それらをリン酸基親和性電気泳動法により分離することにより,アレルの種類とホモ/ムテロの判別を同時に行うことができる。今回は,ヒト心筋由来Naチャネル遺伝子SCN5Aにおける既知のSNPを検出し,アレルの遺伝子型を同定した例を紹介する。この方法により,ミニゲルクラスの電気泳動装置で,ほぼ100%の精度でSNPタイピングができる。本法が,スクリーニングスケールの小さな遺伝子多型の研究に貢献できるものと期待している。この成果は,2008年3月28日に横浜で開催の日本薬学会第128年会で発表される。
|