研究概要 |
生体内のエピジェネティックス制御機構の中で,ゲノムDNAのメチル化は最もよく研究されている。特に癌細胞においては,遺伝子プロモーター領域のメチル化が癌抑制遺伝子の不活化機構として重要であることが知られ,この異常メチル化(エピジェネティックス変異)が癌診断の有用な分子マーカーとして注目されている。それ故に,標的ゲノム領域のメチル化DNAの有無を安定的に分析できる,より特異的で,かつ,簡便な検出技法の開発が急務である。本研究において,私たちは,リン酸基に親和性を示すフォスタグ分子(Phos-tag)を用いた新しい電気泳動法(Zn^<2+>-Phos-tag PAGE)を活用し,Bisulfite法とメチル化特異的PCR法を併用することで既知のメチル化DNAを正確に検出するための新しい遺伝子診断法を開発したので,ここに報告する。 本研究における電気泳動法には,亜鉛錯体であるアクリルアミド結合型Phos-tagをゲル作成時に混合して共重合させたゲルを使用した。dcm遺伝子を保有する大腸菌株と保有しない菌株にそれぞれpUC19プラスミドを形質転換させ,プラスミド単離精製後,それらをメチル化DNAおよび非メチル化DNAサンプルとした。 Bisulfite処理を行ったDNAを鋳型とし,シトシンあるいはチミンを標的とした2種類のアレル特異的PCRプライマー(末端にリン酸基を持つものと持たないものとを1:1に混合)とそれらとペアになる1種類の共通プライマーを用いてPCRを行った。この手順により,リン酸基の付加されたメチル化特異的PCR産物を付加されていないもの(いずれも同じ塩基対数)から分離して検出することが可能となり,最初の実施例として,DUC19の137番目のメチル化シトシンを検出することに成功した。
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