研究概要 |
今年度は、昨年度に続けて、抗癌薬や遺伝子の空間的・時間的制御を可能とする肝臓表面投与製剤の開発のための基礎的段階として、抗癌薬5-fluorouracil(5-FU)や高分子化合物(FITC-dextran,分子量4,400,FD-4)をモデルとして、以下のことを明らかにしている。 1.昨年度の検討より、肝血流が肝臓表面から吸収された後の薬物分布に影響を及ぼすことが明らかとなったので、肝血流を上昇させる血管拡張薬hydralazineとの併用効果を検討した。円筒状のガラス製拡散セルを用いて5-FUをhydralazineと併用してラットの肝臓表面へ投与したところ、5-FUの肝臓表面からの吸収速度は、コントロールとほぼ同じ値を示し、肝臓内の5-FU濃度に部位差はほとんど見られなかった。血管収縮薬であるepinephrineを併用した場合は、肝臓内の投与部位近傍における5-FU濃度は、コントロールと比較して有意に高い値を示しており、大きく異なる結果が得られた。 2.遺伝子医薬品を肝臓表面へ適用する場合は、分子量の影響で吸収速度が極端に遅くなる可能性がある。そこで、従来より経皮吸収などで利用されている吸収促進剤による、高分子化合物FD-4の肝臓表面からの吸収促進効果について検討した。15分前処理または併用投与で、saponinおよびsodium caprateが高い吸収促進効果を示した。さらに、濃度が1%を越えると、吸収促進効果が減弱した。sodium salicylateでは、30分前処理で高い吸収促進効果が得られた。これらの結果から、肝臓表面において吸収促進剤を使用する際には、適切な処理条件の選択が重要であることが示された。
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