従来より製剤設計最適化の支援技術として線形応答曲面法(RSM)が利用され、その有用性が高く評価されてきた。しかし設計変数と製剤特性間の非線形性が強い場合、従来のRSMでは十分な予測精度が得られず、最適解の信頼性が著しく低下することが知られている。本研究では多くの製剤設計に適用可能な汎用性に富む最適設計支援システムの構築を目的とした。 最適設計支援システムにおける最も重要なプロセスは設計変数と製剤特性間の相関モデル作成である。本研究では観測データに誤差が含まれる場合にも真の関数関係を高精度に近似可能な手法として、多次元薄坂スプライン補間の活用を試みた。薄坂スプライン補間は重調和スプラインによる曲面推定と線形多項式による薄板推定の和として得られる多次元データの曲面補間技術である。 本研究では重調和スプライン補間による曲面同定と線形多項式による薄板推定の寄与を自動推定可能な汎用性に富むソフトウェアの開発を試みた。従来のRSMは線形近似手法であるため、最適解の統計学的区間推定が可能である。一方多次元薄坂スプラインのような非線形手法では、最適解の点推定は可能であるものの信頼性評価の手法は未開発であり、現状では最適解の信頼性を客観的に評価することができない。そこで本研究では標本再抽出法を駆使した全く新規な非線形最適解の区間推定法の確立を試みた。 上記により開発した最適設計支援システム及び最適解評価法の有用性を検証するために、ジルチアゼム塩酸塩(DTZ)を長期にわたり徐放する製剤の設計を行った。モデル薬物として選択したDTZは水に易溶性であり、またカチオン性薬物であるため、溶出液の液性によって放出挙動が大きく変化する。本研究では製剤化が困難な事例として、DTZ長期徐放マトリックス製剤の処方設計を選択し、最適設計支援システム及び最適解評価法の有用性を評価した。
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