20年度は、実施計画に基づき、機能性キャピラリーを用いるオンラインインチューブSPME法により、様々な薬毒物や生体成分の分析法を開発し、実試料分析へ応用した。また、薬物代謝活性酵素シトクロムP450(CYP)の分子種の活性測定法を開発し、活性阻害による毒性評価法を確立して食品成分による相互作用を調べた。現在食品成分と毒性評価を同時に測定できるシステムを検討中である。 1. オンラインインチューブSPME/LC-MS法を用いて、尿中ドーピング薬物や大麻代謝物の高感度迅速分析、パツリンやアフラトキシン類などの食品中かび毒(マイコトキシン)の汚染分析、ベンゾ(a)ピレンなどの食品中多環芳香族炭化水素類のインチューブSPME/HPLC-蛍光分析法を開発した。いずれの方法も、有機溶媒をほとんど必要とせず、オンラインで試料の抽出濃縮、自動分析が可能であり、実用的な方法として、生体試料や食品試料の分析に適用できることがわかった。 2. ファイバーSPMEを用いて、皮膚から放出されるガスや滲出成分を効率よくサンプリング、抽出濃縮できる手法を開発し、GC-MS法との連携で高感度選択的なアルコールや体臭の簡易分析法を確立した。本法を用いれば、非侵襲的に生体成分をサンプリング可能であり、疾病診断への応用が期待される。 3. CYP酵素分子種の活性測定法を開発し、カプサイシンやクルクミンなどの香辛料成分にCYP阻害効果が認められた。成分量と阻害効果による毒性を同時評価するために、キャピラリーへの酵素の固定化を検討したが、期待する効果はまだ得られていない。 機能性キャピラリーを用いるオンラインインチューブSPME法は、抽出濃縮効果と自動分析を可能にしたが、今度毒性効果も同時測定できるようになるためには、さらなる改良と工夫が必要である。
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