硫酸化グリコサミノグリカン(GAG)は様々な細胞増殖因子、サイトカイン、モルフォジェンと特異的に相互作用し、それらの活性を調節することによって、機能を発揮する。また、硫酸化GAGは、ウイルス感染の過程においても極めて重要な役割を果たしていることが証明されている。本プロジェクトでは、特に肝臓でのGAGの機能に注目している。平成20年度は以下の実験を行った。 1、 再生期間の異なる再生肝よりGAGを精製し、その構造の特徴、再生過程における構造変化を解析した。また、肝細胞増殖因子など肝再生に関わる増殖因子との相互作用についても解析した。さらに、再生期間の異なる再生肝よりmRNAを単離し、GAGの生合成に関わる酵素群の発現レベルの変化についても調べた。一方、発生研究のモデル生物であるアフリカツメガエルのGAGについて、発生時期の異なる胚より単離し、構造と増殖因子との相互作用能の変化を解明した。肝再生におけるGAGの構造・機能の変化を解明する上で、非常に良いモデルになると考えられる。 2、 ウシの肝臓から単離したGAGについて、C型肝炎ウイルス表面のエンベロープタンパク質のE1、E2タンパク質との相互作用を調べ、相互作用に必要なGAG鎖上の構造的特徴を解明した。 3、 コンドロイチン硫酸の解析をより効果的に行うことを目的として、^1H NMRによるコンドロイチン硫酸中のウロン酸のタイプを定量する方法を開発した。また、コンドロイチン硫酸の構造解析を行うためのツールの一つとして、新規のエンド型コンドロイチン加水分解酵素を発見し、その特異性を解明した。
|