研究概要 |
脳は血液脳関門(BBB)もよって体循環から隔離されており,独自のコレステロールde novo合成経路が発達しており,脳独自のコレステロール代謝系が存在する。しかし,アルツハイマー病発症と発症前高コレステロール血症とに有意な相関関係があることなどから,血液循環系コレステロール代謝と中枢神経系コレステロール代謝が関係あると考えられている。しかし,スタチン服用ではアルツハイマー病発症頻度は下げることはできないといった相反する報告がされている。そこで,マウスを用いて,食餌由来コレステロールが脳のコレステロール代謝に影響を与えるかどうかを検討した。 マウスに高コレステロール食を給餌し,2〜6週間後に脳の遊離コレステロール量,コレステロールエステル量,中性コレステロールエステラーゼ活性を測定した。給餌期間にマウスの体重は普通食マウスと同様に増加した。脳内の遊離コレステロール量は変化が無かったが,コレステロールエステル量は有意に増加した。次に脳内の中性コレステロールエステラーゼ活性を測定したところ,普通食給餌マウスでその活性が存在しており,肝臓と同程度の比活性であった。高コレステロール食給餌マウスで,中性コレステロールエステラーゼ活性が誘導されていた。以上のことから,脳の細胞にもコレステロールのリサイクル経路が存在していると考えられる。 また,平成19年度の実績として中性コレステロールエステラーゼ過剰発現マウスの作成に成功した。このマウスの特徴は,マクロファージの中性コレステロールエステラーゼ活性が高く遊離コレステロールを産生し易いことである。平成20年度は,このマウスを用いて脳のコレステロール代謝の解析を行う予定である。
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