研究概要 |
平成19年度に申請者らは、肺NK細胞の70%にKLRG1が発現していること、抗KLRG1抗体によりKLRG1とそのリガンドであるカドヘリンとの相互作用を遮断することにより、リポ多糖気道内投与により誘発した肺炎症が増悪することを明らかにした。平成20年度は、このメカニズムについて検討した結果、KLRG1を発現するNK細胞、T細胞のうち、NK細胞が関与すること、また、主としてマクロファージにより産生され好中球に働くケモカインであるMIP-2の発現量が、KLRG1の遮断により増加することを明らかにし、NK細胞上のKLRG1を遮断することにより、リポ多糖によるマクロファージの活性化が増進し,炎症増悪に繋がることが示唆された。また、平成19年度に同定したヒトKLRG1のリガンドである3種のカドヘリン(E,N,R)のうち、E-カドヘリンのみがヒト末梢血NK細胞による細胞傷害を効果的に阻害することを明らかにし、E-カドヘリンがヒトNK細胞上の機能的なKLRG1レセプターであることを示した。以上の結果は、NK細胞上に発現するKLRG1の生理的機能の解明に繋がる成果である。一方、KLRG1遺伝子の近傍にコードされている樹状細胞レセプターDCIRファミリー分子群について、リガンドの解析を行い、マウスDCAR1ならびにDCIR2のリガンドがそれぞれある種の糖鎖であることを見いだした。これらの結果は、内在性糖鎖による樹状細胞制御機構の存在を示唆する。
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