研究課題/領域番号 |
19590061
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
小林 哲幸 お茶の水女子大学, 大学院・人間文化創成科学研究科, 教授 (50178323)
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研究分担者 |
相星 淳一 東京医科歯科大学, 医学部, 講師 (50256913)
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キーワード | 脂質 / リゾホスファチジン酸 / メタボローム / 癌転移 / 質量分析 / 浸潤 / オートタキシン / 環状ホスファチジン酸 |
研究概要 |
1.質量分析装置を駆使した脂質メタボローム解析の測定条件の確立:LPAとcPAについて、高感度のソフトイオン化質量分析の測定条件を検討し、ESI-MS/MSでの定量系と、リン酸基特異的な誘導体化を用いたMALDI-TofMSでの定量系の両方を確立しつつある。 2.オートタキシンによるcPA/LPA生合成の調節機構について:血清中に存在するLPA合成阻害因子について解析した結果、過去に報告のあったヒスチジンの他に、いくつかの生体成分が阻害活性を示すことを見出した。また、それらの阻害様式についても解析した。 3.cPAによるがん細胞浸潤・転移抑制抑制機構の解析:通常、浸潤の研究には細胞外マトリックスをコーティングした人工的な膜を通り抜けたがん細胞を観察する実験系が用いられるが、本研究では、in vivo状態をより良く反映しているアッセイ系である中皮細胞を使ったin vitro浸潤アッセイ系を用いて、がん細胞と正常細胞の相互作用を解析した。その結果、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)阻害剤によって浸潤が抑えられたことから、このin vitro浸潤アッセイ系において、MMPが浸潤に関与していることが強く示唆された。また、LPAによって中皮細胞のMMP-2、MMP-9のmRNA発現レベルが上昇し、活性化も促進されるということを示した。一方、中皮細胞がオートタキシンを産生して培養液中でLPAを合成し、浸潤を促進していることも確認した。本研究により、中皮細胞由来のオートタキシンによって合成されたLPAがMMPを誘導し、細胞外マトリックス分解に重要な役割を果たしていることが初めて示された。がん細胞の浸潤抑制を目指して今後さらに研究していく上で、本研究成果はたいへん意義深い。
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