研究課題/領域番号 |
19590063
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
櫻井 宏明 富山大学, 和漢医薬学総合研究所, 准教授 (00345571)
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研究分担者 |
済木 育夫 富山大学, 和漢医薬学総合研究所, 教授 (80133776)
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キーワード | TNF-α / EGF / TAK1 / TAB1 / TAB2 / EGFR / p38 / ERK |
研究概要 |
ErbB受容体ファミリーは、肺がん、乳がんをはじめ多くのがん細胞で過剰発現や変異等が報告されており、がん悪性化に密接に関与している。一方、TNF-αシグナル伝達系は、NF-κBやJNK/p38/ERK MAPKなどのストレス応答シグナルを活性化し、がん細胞のアポトーシス制御や転移などに密接に関与していることが明らかにされてきた。そこで、本研究では、TNF-αシグナルとEGFシグナルの協調的制御機構について検討した。まず、EGF刺激がTAK1非依存的にTAB1およびTAB2のリン酸化を起こし、これがTNF-αによるTAK1活性化を抑制することを見出した。また、TAK1の下流シグナルであるNF-κB活性化も抑制した。一方、TNF-αシグナルはEGFRのチロシンキナーゼの活性化を介さずに、既存のチロシン残基以外のリン酸化、およびそれに伴う細胞内局在化を誘導することをすでに明らかにしている。そこで、その分子機構を解析した結果、TAK1の下流でERKを介してEGFRのThr-669が、またp38を介してEGFRのSer-1046/1047がリン酸化される二つの新しいシグナル伝達経路が存在することを見出した。Thr-669はEGFで刺激した場合においても強くリン酸化されたが、Ser-1046/1047はリガンド刺激ではほとんどリン酸化されなかった。このうち、TAK1-p38-EGFR経路はEGFRの細胞内局在化を制御するとともに、TNF-αシグナル伝達機構においてNF-κB生存シグナルとは全く独立した新たな生存シグナルとなっていることを突き止めた。 以上のように、TNF-αシグナルとEGFシグナルの交差干渉の分子機構においてTAK1キナーゼが重要な役割を果たしていることを明らかにした。
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