本研究はレニンーアンジオテンシン系および関連因子の腎不全における病態生理学的役割の解明を通して、将来の腎不全治療薬・予防薬の開発に向けた基礎研究を目的としている。本年度は、昨年度の結果を受けて主にマウスを用いた腎不全モデルの基礎的病態の把握と、それに関連して変動する病態因子の測定を行った。腎不全モデルとしては、尿細管間質性腎炎を引き起こすcisplatinの腹腔内投与を行った。cisplatin投与前および投与後3日、7日、14日目にマウス用メタボリックケージにて24時間尿を採取し、採尿直後にpentbarbital麻酔下にて速やかに採血および腎組織の摘出を行った。 組織標本は、適宜分割後に液体窒素により急速冷凍し、腎組織切片作成および腎組織中mRNAおよび各種タンパク質抽出に用いた。血中BUN濃度と血中クレアチニン濃度はcisplatin投与3日後に一番高値を示し、クレアチニンクリアランス値、尿量の減少とともに、cisplatinによる急性腎不全の病態を呈していた。Cisplatin投与3日後の腎組織切片像は、ヘマトキシリン-エオジン染色では、尿細管への浸潤細胞数の増加が観察された。リアルタイムPCR測定により、COX-2、TGF-βの発現亢進が観察された。また、Rho binding domainを融合させたglutathione-S-transferaseを用いた免疫沈降物のWestern blottingにより、cisplatinによるRhoの活性化が観察された。レニンーアンジオテンシン系の活性化はG_<12/13>タンパク質を介してRho、Rhoキナーゼ系を活性化するため、レニンーアンジオテンシン系の特異的遮断薬が腎不全に対する保護効果を示している一因としてのRhoの役割の解明がますます重要になると考えられる。
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