研究概要 |
小胞体ストレスが関与する神経変性疾患との観点でユビキチンリガーゼの一種である新規遺伝子HRD1の機能解析を行うこと。さらに、4-PBAの誘導体および他の分子についてケミカルシャペロン機能を解析することで、ケミカルシャペロンとしての活性を決定する分子機構を明らかにし、神経変性疾患に対する新薬開発における新しい治療薬のターゲットとしての小胞体・変性蛋白質分解機構、および治療薬としてのケミカルシャペロン機能を明らかにすることを目的で研究を行い、初年度において以下の成績を得た。 1)変性蛋白質の分解に促進的に関与する新規ユビキチンリガーゼHRD1について、抗HRD1抗体を用いてHRD1のマウス脳内組織局在を詳細に検討した結果、HRD1はパーキンソン病で脱落が認められる黒質緻密層周辺のドパミンZユーロンに発現していた。さらに、大脳皮質、海馬(歯状回、CA領域)、線条体および淡蒼球、そして小脳プルキンエ細胞にも発現していることを見出した。一方で、グリア細胞には発現していなかったことから、HRD1は脳内においては神経細胞特異的に発現していることが明らかとなった。また、HRD1にはパーキンソン病以外にも神経変性疾患に関与する可能性が示唆された。 2)蛋白質の折りたたみを促進し,異常蛋白質の凝集を防ぐ働きを持つ化合物であるケミカルシャペロン4-PBAの誘導体および他の物質(共同研究にて化学合成した)についてケミカルシャペロンの作用機構を検討した結果、4-PBAと同等それ以上のケミカルシャペロン能を有する低分子有機化合物が得られ、今後ケミカルシャペロンとしての活性を決定する分子機構を明らかにする予定である。
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