研究概要 |
TNFスーパーファミリーは、細胞死と生存、炎症の惹起やショックの誘導、感染防御、関節リウマチなど、免疫・炎症において多彩な生理活性を示すサイトカインである。TNFαの受容体TNFRI、TNFRIIは、細胞死と細胞生存を誘導するなど相反する作用があるが、その作用に対する明快な説明はなされていない。そこで、我々はTNFシグナリングの解析を行った。TNF受容体下流のアダプター分子であるTRAF6欠損細胞での解析において、1)TARF6はTNFシグナリングにおいて、負の制御をしている可能性を見い出した。すなわち、TRAF6-/-MEFではTNF誘導によりGM-CSF,IL-6,MCP-1の発現が増加している。また、GM-CSFの産生はMSCV-TRAF6遺伝子のノックインで、TRAF6+/+MEFのレベルに戻る。この制御にはTRAF6によるNF-kB転写因子の関与によることを明らかにした(Cytokine2009)。2)抗炎症剤セレコキシブはTNFαによるNF-kBの活性化を抑制して、CXCL1やCCL2の遺伝子発現を抑制するが、その機序の解析を行った。すなわち、セレコキシブはIKKの活性化やIkBα/βの分解には作用せず、NF-kBp65サブユニットの核への移行を選択的に抑制することがわかった(Biochem Pharmacol.2008)。3)IL-33はST2Lのリガンドとして作用するが、TRAF6欠損した細胞では、IL-33によるケモカイン産生が誘導できなかった。すなわち、ST2Lを介するシグナル伝達系にTRAF6が重要な役割を持つことを明らかにした(Cellular Signalling,2008)。 以上の研究は、TNFシグナリングにおけるTRAF6の役割を解析したものであり、TNFの多彩な生理作用を明らかにしたことで,有意義な結果と考える。
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